レバーという食材は、むずかしい。
ちょっと火が入りすぎると、すぐにパサつく。
炒めているうちにモソッとする。
そして、ふとした瞬間に鉄っぽさが顔を出す。
こちらとしては、ニラレバ炒めを作っているつもりなのに、フライパンの中ではレバーがどんどん機嫌を損ねていく。
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか」
そう声をかけたくなる食材、それがレバーです。
今回は、その豚レバーを牛乳と一緒に低温調理してから、1cmほどの厚みに切り、粉をつけてステーキのように焼き、最後にニラ・もやし・きくらげと合わせました。
結果は、かなり良かった。
味はちゃんとニラレバ。
でもレバーは、いつものニラレバとはまったく違います。
しっとり。
ほっくり。
外は香ばしく、中はなめらか。
これは、レバーを炒め物の具にするのではなく、レバーステーキをニラレバ味に着地させる料理です。
町中華の顔をしているのに、火入れだけ妙に丁寧。
いわば、カウンターの奥からソムリエが出てくるタイプのニラレバです。
ひとくちメッセージ
豚レバーは、先に低温調理してから焼くと、炒めてもパサつきにくい。
牛乳で下処理し、粉をつけて香ばしく焼けば、味はニラレバ、食感はしっとりほっくりに仕上がります。
今回の料理
低温豚レバーのステーキ式ニラレバ炒め
普通のニラレバ炒めは、薄く切ったレバーを下味につけ、粉をまぶして炒めます。
もちろん、それもおいしい。
でも難点は、レバーの火入れです。
火が弱いと臭みが残る。
火が強すぎると固くなる。
野菜と一緒に炒めすぎると、せっかくのレバーがパサつく。
そこで今回は、発想を変えます。
レバーは先に火を入れておく。
炒めるのではなく、焼く。
野菜とは最後に合わせる。
この方法にすると、レバーの中心はしっとりしたまま、表面には焼き色と香ばしさがつきます。
そして最後に、ニラ・もやし・きくらげ・にんじんと合わせることで、味の着地点はしっかりニラレバになります。
この料理のポイント
今回のポイントは3つです。
1. 豚レバーを牛乳と一緒に低温調理する
レバーは牛乳と一緒に低温調理しました。
牛乳を使うことで、レバー特有の鉄っぽい香りがやわらぎ、口当たりも少しまろやかになります。
低温調理後のレバーは、まるでテリーヌのような状態。
しっとりしていて、包丁で切ると断面がなめらかです。
この状態を見た瞬間、普通に炒めるのはもったいないと思いました。
これはもう、炒め物の具ではなく、ステーキとして扱うべきレバーです。
2. 1cm厚に切って、粉をつけて焼く
低温調理したレバーを1cmほどの厚みに切ります。
薄くしすぎると、焼いたときに崩れやすくなります。
逆に1cmくらい厚みがあると、外側は香ばしく、中はしっとり感が残ります。
表面の水分をしっかり拭き、片栗粉を薄くまぶします。
ここで大事なのは、粉をつけすぎないこと。
レバーに雪を積もらせる必要はありません。
冬の東北ではなく、軽い初霜くらいで十分です。
3. レバーは野菜と一緒に炒めない
今回の最大のポイントはここです。
レバーは先に焼いて、いったん取り出す。
野菜を炒めて、最後にレバーを戻す。
レバーを最初から野菜と一緒に炒めると、せっかくのしっとり感が崩れます。
低温調理したレバーは、テリーヌのようにやわらかい。
つまり、フライパンの中で何度もあおると、かなり高い確率で崩れます。
レバーに対して、フライパンの中で体育会系の指導をしてはいけません。
優しく扱います。

材料
2人分
- 豚レバー 200〜250g
- 牛乳 適量
- もやし 1袋
- ニラ 1/2束〜1束
- にんじん 少量
- きくらげ 適量
- 片栗粉 適量
- 油 適量
- ごま油 少々
タレ
- 醤油 大さじ1
- オイスターソース 小さじ2
- 紹興酒 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
- おろし生姜 少々
- おろしにんにく 少々
- 黒胡椒 少々
- 花椒 好みで少々
作り方
1. 豚レバーを牛乳と一緒に低温調理する
豚レバーを牛乳と一緒に袋へ入れます。
空気を抜き、低温調理器で加熱します。
今回のレバーは、58度で二時間。低温調理後にテリーヌのようなしっとりした状態になりました。
ここで大切なのは、豚レバーは必ず中心までしっかり加熱することです。豚の肉や内臓は生食を避け、中心部まで十分に加熱する必要があります。厚生労働省も、豚レバーなどの内臓は生で食べず、中心まで火を通すよう案内しています。
低温調理だけで不安がある場合は、仕上げの焼きで中心までしっかり温めます。
ここはおいしさ以前に、安全第一。
レバーに関しては、ロマンより中心温度です。


60度で2時間で作った豚レバーの低温調理ステーキの記事です

2. レバーを1cm厚に切る
低温調理した豚レバーを取り出し、表面の水分を拭きます。
1cmほどの厚みに切ります。
断面は、しっとりなめらか。
この時点で、すでに普通のニラレバとは別の方向へ進み始めています。

3. 片栗粉を薄くまぶす
切ったレバーに、片栗粉を薄くまぶします。
このとき、表面の水分をしっかり拭いておくのが大事です。
水分が残っていると、粉が厚くつきすぎます。
片栗粉をまぶしたら、余分な粉は軽く落とします。
目指すのは、唐揚げではなく、ステーキの薄い衣です。

4. 多めの油でレバーを焼く
フライパンに多めの油を入れ、レバーを焼きます。
ここでは動かしすぎません。
片面に焼き色がつくまで待ちます。
焼き色がついたら、そっと返します。
この焼き色が、今回の料理の香ばしさになります。
低温調理だけでは出ない、フライパンの仕事です。
レバーは焼けたら一度取り出します。

5. 野菜を炒める
同じフライパンの油を少し残し、もやし、にんじん、きくらげを炒めます。
もやしは強火で短時間。
水分を出しすぎないようにします。
ニラは最後の方に入れます。
ニラは火を入れすぎると香りが飛びます。
ニラの仕事は、がんばりすぎないことです。
「入って、香って、退勤」
それで十分です。

6. タレを入れて絡める
合わせておいたタレを入れます。
醤油、オイスターソース、紹興酒、生姜、にんにく。
これで一気にニラレバの香りになります。
ここで煮すぎないのが大事です。
タレを入れたら、強火でサッと絡める。
野菜のシャキッと感を残します。
7. 最後にレバーを戻す
最後に、焼いておいたレバーを戻します。
ここでは炒めません。
タレをまとわせるだけです。
レバーを野菜の上に置き、タレをスプーンでかけるくらいでもいいです。
レバーは主役。
フライパンの中で胴上げしてはいけません。

完成
器に野菜を盛り、その上にレバーをのせます。
見た目はニラレバ炒め。
でも、食べると少し違います。
レバーは、しっとり。
そして、ほっくり。
普通のニラレバにありがちなパサつきがありません。
外側は粉焼きで香ばしく、タレをまとっている。
中は低温調理のおかげで、なめらかでやさしい食感。
味はしっかりニラレバです。
醤油、オイスターソース、紹興酒、ニラ、もやし。
この組み合わせは、疑いようもなくニラレバ。
でもレバーだけが、別物です。
味は町中華。
食感はレバーステーキ。
これが今回の答えでした。

ステーキ式ニラレバ
食べてみた感想


これはおいしいです。
まず、味はちゃんとニラレバ。
食べた瞬間に、ニラともやしとオイスターソースの香りがきます。
でも、レバーの食感が違います。
一般的なニラレバのレバーは、少し歯ごたえがあって、火が入りすぎるとパサつきます。
今回のレバーは、しっとりしていて、噛むとほっくり崩れます。
レバーペーストほどなめらかではない。
でも、普通の炒めレバーほど硬くない。
ちょうど、レバーテリーヌとレバーステーキの中間のような食感です。
そして、きくらげが良い仕事をしています。
レバーのしっとり。
もやしのシャキッ。
ニラの香り。
きくらげのコリッ。
この食感の組み合わせが、かなり良い。
にんじんの色も効いています。
茶色くなりがちなニラレバに、少し明るさが出ます。
料理も人間関係も、彩りは大事です。
全部茶色だと、会議室みたいになります。
今回わかったこと
今回わかったことは、かなり大きいです。
レバーは炒めなくてもニラレバになる
ニラレバ炒めという名前に引っ張られると、レバーも野菜も一緒に炒めたくなります。
でも、レバーは先に焼いて、最後に合わせるだけでいい。
味の決め手は、ニラ、もやし、オイスターソース、醤油、生姜、にんにく。
ここがそろえば、味はちゃんとニラレバになります。
レバーを無理に炒める必要はありません。
低温調理するとパサつきにくい
低温調理で先に火を入れておくと、焼いたときに中心がパサつきにくいです。
特に今回のように、低温調理後のレバーがテリーヌのようにしっとりしている場合、そこに粉をつけて焼くと、外側だけ香ばしくできます。
これはかなり相性がいいです。
牛乳下処理はやっぱり有効
牛乳と一緒に低温調理したことで、レバー特有のクセがやわらぎました。
レバーの香りは残っています。
でも、嫌な鉄っぽさが前に出すぎない。
ニラ、オイスターソース、紹興酒の香りともなじみやすくなります。
低温調理を使った肉料理は、ほかにも牛ランプや牛ハツなどで試しています。レバーと同じように、火入れで食感が大きく変わる食材なので、あわせて読むと低温調理の使い方がかなり見えてきます。

失敗しないコツ
表面の水分をしっかり拭く
低温調理後のレバーは、牛乳や肉汁が表面についています。
これを拭かずに粉をつけると、粉がベタッとつきます。
焼いたときにカリッとしにくくなるので、キッチンペーパーでしっかり拭きます。
粉は薄くつける
片栗粉は薄くで大丈夫です。
粉が厚すぎると、衣の主張が強くなります。
今回の料理で主役にしたいのは、衣ではなくレバーです。
薄くまとわせて、焼き色とタレの絡みをよくするくらいで十分です。
レバーは動かしすぎない
焼いているときに何度も触ると、崩れやすくなります。
片面ずつ焼き色をつける。
返すのは一度。
あとは待つ。
料理における「待つ」は、だいたい正義です。
焦って触ると、たいてい事件が起きます。
野菜は強火で短時間
もやしは水分が出やすい野菜です。
強火でサッと炒めて、シャキッと仕上げます。
ニラは最後。
香りを残すために、火を入れすぎないようにします。
レバーは最後に戻すだけ
ここが一番大事です。
レバーは最後に戻して、タレをまとわせるだけ。
炒めるのではなく、合わせる。
この意識で仕上げると、レバーのしっとり感が残ります。
おすすめのアレンジ
花椒を少し加える
今回の味に、花椒はかなり合います。
レバーのコクに、花椒の香りが入ると、味が一段軽くなります。
入れすぎると麻婆方面へ旅立つので、少量で十分です。
黒酢を少し加える
仕上げに黒酢を少し加えるのもおすすめです。
レバーの濃厚さに酸味が入り、後味が軽くなります。
特に、タレが少し濃いめになったときに合います。
辣油を少しかける
くんの食べる辣油があるなら、最後に少しのせても良いです。
レバー、ニラ、もやし、オイスターソース。
そこに香ばしい辣油。
これは白ごはんが進みます。
進みすぎて、炊飯器の前で反省会が始まります。
合わせたいワイン
この料理は、ニラレバなので少し難しいです。
レバーの鉄っぽさ、ニラの香り、オイスターソースのコク。
そこに油の香ばしさもあります。
赤ワインなら、重すぎないものが良いです。
おすすめは、ガメイやピノ・ノワール。
渋みが強すぎず、果実味と酸があるものが合います。
特に、軽めのピノ・ノワールは、レバーのしっとり感と相性が良いです。
白なら、少し熟成感のある甲州もおもしろいです。
レバーのほっくりした食感と、紹興酒やオイスターソースの旨みに寄り添ってくれます。
ロゼも合います。
ニラレバというとビールに行きたくなりますが、今回のレバーはステーキ寄り。
ワインを合わせる余地があります。
町中華の皿に、ワイングラス。
少し不思議ですが、こういう組み合わせが家ごはんの楽しいところです。
ぶーちゃんのひとこと
「レバー、いいにおいするけど、ぶーちゃんは見守り係だよ」
そうです。
これは人間用です。
ぶーちゃんは、今日も真剣な顔で見ています。
その目はまるで、料理研究家の審査員。
ただし、審査基準はだいたい
「床に落ちたかどうか」
です。
まとめ
今回は、豚レバーを牛乳と一緒に低温調理し、1cm厚に切って粉をつけ、ステーキのように焼いてからニラレバ炒めにしました。
結果は、かなり成功。
味は、しっかりニラレバ。
でもレバーの食感は、普通のニラレバとは違います。
しっとり。
ほっくり。
外は香ばしく、中はなめらか。
レバーを野菜と一緒に炒めない。
先に低温調理して、焼いて、最後に合わせる。
この方法なら、レバーのパサつきを抑えながら、ニラレバらしい味に仕上げることができます。
レバーが苦手な人にも、少し試してほしい一皿です。
これは、ただのニラレバ炒めではありません。
低温調理で作る、ステーキ式ニラレバ。
町中華の味をしながら、レバーの火入れだけ妙に丁寧。
こういう料理、ボクはかなり好きです。
低温調理で、レバーはもっとおいしくなる
レバーは炒めすぎるとパサつきやすい食材です。
でも、先に低温調理で火を入れておけば、中心はしっとり、仕上げのフライパンで外側だけ香ばしく焼くことができます。
今回のようなステーキ式ニラレバは、低温調理器があるとかなり作りやすくなります。
レバー料理のパサつきが気になる方は、低温調理を取り入れてみるのもおすすめです。

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