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牛ハツといえば焼肉屋さんでは人気者ですが、自宅の台所へ連れて帰ると、急にこちらを試すような顔をしてきます。
焼きすぎれば硬くなる。
火入れが甘ければ心配になる。
なかなか緊張感のある食材です。心臓だけに、こちらの心拍数も少し上がります。
そこで今回は、牛ハツを57℃で2時間低温調理してから厚切りにし、ニラと一緒にスパイス炒めにしました。
味付けは醤油、オイスターソース、紹興酒をベースに、クミン、ターメリック、粉唐辛子を加えた中華風のカレーダレ。
低温調理した牛ハツは、厚切りでも驚くほどしっとり柔らか。表面を香ばしく焼いてからスパイスダレを絡めると、これはもう白ごはんの減り方が通常営業ではありません。
低温調理前の牛ハツ。余分な脂や硬い筋があれば、あらかじめ取り除いておきます。

牛ハツは低温調理するとどうなる?
牛ハツは牛の心臓です。
内臓肉に分類されますが、レバーのようなねっとりした食感ではなく、赤身肉に近い味わいと、ハツ特有のサクッとした歯切れが魅力。
ただし、フライパンだけで中までしっかり火を入れようとすると、水分が抜けて硬くなりやすい食材でもあります。
今回は塊のまま低温調理することで、中心までゆっくり火を入れました。

57℃で2時間低温調理した牛ハツ。加熱前より落ち着いた色合いになりました。
切ってみると、断面はきれいなロゼ色。
厚切りにしても、中心まで均一な仕上がり。水分を保ったしっとりした断面です。
今回はこの柔らかさを生かすため、細切りにはせず、あえて厚切りステーキのような形で仕上げます。
薄切りのニラ炒めもおいしいのですが、せっかく2時間かけて火を入れた牛ハツです。ここは少し立派な顔でお皿に登場してもらいましょう。
低温調理牛ハツとニラのスパイス炒めの材料
材料・2〜3人分
- 牛ハツ……約300〜350g
- ニラ……1束
- 片栗粉……適量
- 太白胡麻油または米油……大さじ1程度
合わせ調味料
- 醤油……大さじ1
- オイスターソース……小さじ2
- 紹興酒……大さじ1
- クミンパウダー……小さじ1
- ターメリック……小さじ1/2
- 粉唐辛子……小さじ1/3〜1/2
- おろしニンニク……小さじ1/2
- おろし生姜……小さじ1/2
- 鶏がらスープ……50ml程度
辛さや塩分は、使用するオイスターソースや鶏がらスープの濃さによって調整してください。
今回の料理で活躍する調理道具
低温調理器があると、牛ハツだけでなく鶏胸肉、豚肉、魚介などの火入れにも使えます。厚切り肉をしっとり仕上げたいときの頼れる一台です。
作り方
1.牛ハツを低温調理する
牛ハツの表面にある余分な脂、血管、硬い筋などを取り除きます。
耐熱性のある袋へ入れて空気を抜き、低温調理器を使って57℃で2時間加熱しました。
低温調理後は袋から取り出し、表面の水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取ります。
ここで水分が残っていると、焼くというより蒸す方向へ話が進みます。料理にも進路指導が必要です。
2.牛ハツとニラを切る

低温調理した牛ハツを、1.5〜2cmほどの厚切りにします。
ニラは4〜5cm幅に切ります。根元に近い太い部分と葉先を分けておくと、火の通りを調整しやすくなります。
3.牛ハツに片栗粉を薄くまぶす

牛ハツの両面に、片栗粉を薄くまぶします。
片栗粉は厚い衣にせず、表面がうっすら白くなる程度。焼き色とタレの絡みをよくします。
片栗粉をつけることで表面が香ばしく焼け、最後に加えるスパイスダレもまといやすくなります。
4.牛ハツの表面を強火で焼く

フライパンに太白胡麻油を入れて、しっかり熱します。
牛ハツを並べ、強火で両面を短時間ずつ焼きます。
中まで火を入れ直すのではなく、表面に香ばしい焼き色をつけるのが目的です。
牛ハツはすでに低温調理してあるので、ここで長時間焼く必要はありません。焼き色がついたら次へ進みます。
5.ニラを加える

牛ハツに焼き色がついたら、ニラを加えます。
牛ハツが見えなくなるほど、ニラをたっぷり。少し多く見えても、加熱するとちょうどよい量になります。
ニラは火を入れすぎると水分が出て、せっかくの香りも弱くなります。強火のまま、手早く炒めます。
6.スパイス入りの合わせ調味料を加える

醤油、オイスターソース、紹興酒、クミン、ターメリック、粉唐辛子、おろしニンニク、おろし生姜、鶏がらスープを混ぜておきます。
合わせ調味料をフライパンへ一気に加えます。
中華の合わせ調味料にクミンとターメリックを加えた、カレー香るスパイスダレ。
調味料を加えた瞬間、紹興酒、ニンニク、生姜、クミンの香りが蒸気と一緒に立ち上がります。
この香りで白ごはんを食べられそうですが、まだ少し早いので我慢します。
7.強火で煮絡める

フライパンを揺すりながら、牛ハツとニラにタレを煮絡めます。
片栗粉をまとわせた牛ハツに、スパイスダレがとろりと絡んでいきます。
タレに軽くとろみがつき、ニラが鮮やかな緑色のうちに火を止めます。
厚切り牛ハツとニラのスパイス炒めが完成

57℃で低温調理した厚切り牛ハツと、クミンとターメリックが香るニラ炒め。
完成した牛ハツは、表面が香ばしく、中はしっとり柔らか。
厚切りなので牛ハツらしい弾力はきちんと残っていますが、硬さやパサつきは感じません。
そして今回の主役は、牛ハツだけではありません。
醤油とオイスターソースの濃厚な旨味に、紹興酒の香り。そこへクミンの爽やかなスパイス感と、ターメリックの土っぽく温かな風味が重なります。
ニンニクと生姜、粉唐辛子も加わり、味わいは中華料理とスパイスカレーの中間地点。
その中間地点には、どうやら大盛りの白ごはんが停車しているようです。
おいしく作るポイント
牛ハツの表面の水分をしっかり拭く
低温調理後の牛ハツは、袋の中に肉汁が出ています。
表面が濡れたまま焼くと香ばしい焼き色がつきにくいため、キッチンペーパーで丁寧に水分を拭き取ります。
片栗粉は薄くまぶす
片栗粉をつけすぎると衣が厚くなり、牛ハツの食感が分かりにくくなります。
表面がうっすら白くなる程度にまぶすことで、香ばしさとタレの絡みを両立できます。
フライパンで加熱しすぎない
牛ハツは低温調理の段階で火を入れているため、フライパンでは表面を焼き、タレを絡めるだけ。
長く炒めすぎると水分が抜けて硬くなるので、強火で短時間に仕上げます。
ニラは最後に手早く仕上げる
ニラの魅力は、シャキッとした食感と青々しい香りです。
タレを加えたあとは手早く煮絡め、ニラの色と食感が残っているうちに火を止めます。
味の決め手になるオイスターソース
オイスターソースは商品によって塩味や甘さ、牡蠣の旨味がかなり異なります。炒め物や煮込み料理をよく作るなら、旨味の濃いタイプを一本用意しておくと便利です。
クミンとターメリックがあると料理の幅が広がります
クミンは肉料理や炒め物、ターメリックはカレーやスープ、炊き込みごはんにも使えます。少量加えるだけで、いつもの醤油炒めが異国へ出張します。
ソムリエのひとこと
クミン、ターメリック、ニンニク、粉唐辛子を使った牛ハツ炒めには、まず冷えたラガービールがよく合います。
炭酸と苦味が濃厚なオイスターソースのコクを流し、クミンの香りを爽やかに引き立ててくれます。
赤ワインを合わせるなら、果実味が豊かでタンニンが強すぎないモンテプルチアーノ・ダブルッツォや、スパイシーな香りを持つシラーがおすすめ。
ただし、この料理に最も自然に寄り添う飲み物は何かと問われたら、今回は少し迷います。
ビールでも赤ワインでもなく、白ごはんがグラスを持たずに堂々と優勝候補へ入ってきました。
まとめ
牛ハツを57℃で2時間低温調理し、厚切りにしてからニラとスパイス炒めにしました。
低温調理した牛ハツはしっとり柔らかく、表面を香ばしく焼くことで、ハツ特有の心地よい弾力も楽しめます。
醤油、オイスターソース、紹興酒をベースに、クミン、ターメリック、粉唐辛子、ニンニク、生姜を加えた合わせ調味料は、まるで中華風のスパイスカレー。
ニラの香りも加わり、厚切り牛ハツに濃厚なタレがしっかり絡みます。
牛ハツは焼肉だけではありません。
低温調理とスパイスを組み合わせれば、厚切りのまま楽しめる、立派なごはん泥棒になります。
ごはんは少し多めに炊いておいてください。そこだけは低温ではなく、早めの判断が必要です。
※今回の57℃・2時間は筆者が行った調理記録です。肉の厚さ、調理前の温度、低温調理器の性能などによって加熱状態は変わります。特に内臓肉を調理する際は、鮮度や衛生管理に十分注意し、使用する調理器具や食材の案内に従って、中心まで適切に加熱してください。

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