餃子。
焼きたて。
パリパリの羽根。
もちっとした皮。
噛めば、中からジュワッと豚肉の旨味。
ここまで来ると、
「ビールください」
となるのが普通です。
分かります。
餃子とビール。
長年連れ添った夫婦のようなものです。
こちらが突然、
「本日からワインも同居します」
と言ったところで、
少々気まずい。
でも。
餃子とワイン、かなり合います。
しかも面白いのは、
白か赤かよりも、
餃子を何につけて食べるか。
ここでワインが変わります。
酢醤油。
酢胡椒。
黒酢。
辣油。
そして、何もつけない。
同じ餃子なのに、
小皿を変えただけでワインが席替えを始めます。
今回は、
豚肉・キャベツ・ニラ・生姜・にんにくで作る、ど真ん中の羽根つき餃子。
変化球は投げません。
王道の餃子を実際に作り、
料理人とソムリエ、両方の目線から、
餃子にはどんなワインが合うのか。
さらに、
実際に買うならどの銘柄がいいのか。
ここまで本気で考えてみます。
結論|羽根つき餃子なら、まず辛口スパークリング
今回、一本だけ選ぶなら、
辛口のスパークリングワイン。
中でも、
カヴァ
をおすすめします。
理由は簡単です。
羽根つき餃子には、
- 豚肉の脂
- 胡麻油
- 肉汁
- 焼き目の香ばしさ
- 羽根のパリパリ感
があります。
そこへ、
泡と酸。
これが実に気持ちいい。
餃子を一個。
泡をひと口。
脂が軽くなる。
また餃子。
また泡。
そして、
また餃子。
……。
ペアリングとしては成功です。
餃子の在庫管理としては失敗です。
餃子にワインを合わせる4つのポイント
「豚肉だから赤ワイン」
だけでは決まりません。
餃子で見るべきポイントは、
脂・香味野菜・焼き目・タレ。
この4つです。
① 豚肉と胡麻油の脂には「酸」
餃子は見た目以上に、
脂を楽しむ料理です。
豚肉。
胡麻油。
焼き油。
肉汁。
ここに酸の低い重たいワインを合わせると、
一個目は美味しい。
二個目も美味しい。
七個目くらいから、
口の中で脂が町内会を作り始めます。
そこで必要なのが、
酸。
リースリング。
スパークリング。
ガメイ。
こういった酸のあるワインなら、
一口ごとに口の中を整えてくれます。
② ニラ・生姜・にんにくには「香り」
王道餃子には、
香味野菜がしっかり入ります。
ニラ。
生姜。
にんにく。
長ネギ。
ワイン側にも、
柑橘。
ハーブ。
スパイス。
赤い果実。
など香りがあると、
料理との接点が増えます。
だから餃子は、
意外とワインを選ぶのが楽しい料理なんです。
③ 羽根の香ばしさには「泡」が強い
今回作るのは、
普通の焼き餃子ではなく、
羽根つき餃子。
パリッ。
カリッ。
そこへ、
シュワッ。
非常に分かりやすい。
特に瓶内二次発酵タイプのスパークリングには、酵母由来のトーストを思わせるニュアンスが出ることがあります。
例えばフレシネ コルドン ネグロは、公式にもグレープフルーツやリンゴに加えて、瓶熟成由来のトーストを思わせる風味が説明されています。
つまり、
焼けた羽根の香ばしさと、ワイン側の香ばしさ。
ここもつながります。
④ 最大の問題は「何をつけるか」
餃子本体より、
ワインを大きく変えるのがタレです。
酢醤油。
酢胡椒。
黒酢。
辣油。
何もつけない。
同じ餃子なのに、
味の方向がかなり変わります。
そこで今回は、
餃子+タレ
までを一つの料理として考えます。
まずは王道の羽根つき餃子を作る

ワインに合わせるからといって、
餃子の中にブルーチーズを入れたり、
トリュフを削ったりはしません。
今回は、
普通に美味しい餃子。
これが大事。
読者が、
「じゃあ今晩やってみよう」
と思える料理にします。
材料|約25個分

- 餃子の皮……25枚
- 豚ひき肉……200g
- キャベツ……200g
- ニラ……1/2束
- 長ネギ……1/3本
- 生姜……15g
- にんにく……1片
- 醤油……大さじ1
- 紹興酒または酒……大さじ1
- オイスターソース……小さじ1
- 胡麻油……大さじ1
- 塩……適量
- 白胡椒……適量
羽根用
- 水……150ml
- 薄力粉……小さじ2
- 片栗粉……小さじ1
仕上げ用に、
- 胡麻油……少々
です。
作り方① キャベツの水分を整える
キャベツは細かく刻み、
軽く塩を振ります。
少し置いたら、
余分な水分を軽く絞ります。
ここで、
雑巾くらい全力で絞る必要はありません。
キャベツにも、
肉汁を抱えるという大事な仕事があります。
作り方② 豚肉を先に練る
ボウルに、
豚ひき肉。
塩。
醤油。
紹興酒。
オイスターソース。
白胡椒。
胡麻油。
を入れ、
まずは肉だけをしっかり練ります。
粘りが出てから、
キャベツ。
ニラ。
長ネギ。
生姜。
にんにく。
を加えます。
この順番にすると、
肉のまとまりが良くなり、
焼いたときのジューシーさにつながります。
作り方③ 包む

餃子の皮に餡をのせ、
包みます。
形が多少不揃いでも大丈夫。
家庭の餃子で必要なのは、
芸術点ではありません。
肉汁を逃がさないこと。
こちらの配点が高い。
肉汁ジュワッとさせたい場合には、鶏ガラスープのゼラチンを入れると良いです。


作り方④ 羽根つきに焼く

フライパンに油を薄く引き、
餃子を並べます。
底面に軽く焼き色がついたら、
よく混ぜた、
水120ml+薄力粉小さじ2+片栗粉小さじ1
を加えます。
蓋をして蒸し焼き。
水分がほとんどなくなったら蓋を外し、
最後に胡麻油を少量。
羽根が、
カリッ。
パリッ。
となるまで焼きます。
皿をかぶせ、
ひっくり返す。
ここが本日のハイライト。
成功すれば歓声。
失敗すると、
一度キッチンが静かになります。
餃子に合う具体的なワイン5本
ここからが本題です。
「リースリングがおすすめ」
だけでは、
ワイン売り場に行った読者が、
また立ち尽くしてしまいます。
ですから今回は、
具体的な銘柄まで選びます。
① 最初の一本なら|フレシネ コルドン ネグロ
スペイン・カヴァ
今回の総合1位。
王道羽根つき餃子なら、
まずこれです。
フレシネ コルドン ネグロ。
辛口カヴァ。
公式情報では、パレリャーダ、マカベオ、チャレロを使い、レモンやシトラス系の香り、キリッとした酸、細かな泡立ちが特徴です。
なぜ餃子に合う?
羽根。
豚肉。
胡麻油。
これを、
泡と酸がまとめて流してくれる。
さらに瓶熟成由来の香ばしいニュアンスが、
羽根の焼き目ともつながります。
おすすめの食べ方
何もつけない餃子
または、
酢胡椒。
酢胡椒なら、
餃子の脂。
酢の酸。
胡椒。
ワインの酸。
泡。
全部が同じ方向を向きます。
飲む温度
6〜8℃くらい。
しっかり冷やしてスタート。
こんな人に
「難しいことはいいから、とりあえず餃子に合う一本を教えて」
という方。
これです。
ちなみに750mlだけでなく、375mlや200mlも公式ラインナップにあります。餃子一皿で試したい人にも便利です。
② 辣油を使うなら|ドクター・エル リースリング・ドライ
ローゼン・ブラザーズ/ドイツ・モーゼル
次はこちら。
ドクター・エル リースリング・ドライ。
モーゼルのリースリング100%。
爽やかで、
酸がきれい。
エノテカでは「歯切れの良い酸味」が特徴として紹介されている辛口リースリングです。
なぜ餃子に合う?
特に、
辣油を入れた酢醤油。
ここ。
唐辛子の辛味。
ニラ。
生姜。
にんにく。
胡麻油。
これらに、
リースリングの柑橘系の爽やかさが入ると、
餃子がぐっと軽く感じます。
麻婆豆腐の記事でも出てきましたが、
辛味+油脂+香味野菜
にリースリングはかなり使いやすい。
おすすめの食べ方
酢醤油+自家製辣油
です。
自家製辣油の作り方はコチラの記事から
「麻婆豆腐に合うワインは?」の記事はこちら
③ 酢胡椒を上品に合わせるなら|トリンバック リースリング
フランス・アルザス
もう少しシャープに合わせたいなら、
トリンバック リースリング。
アルザスの名門トリンバックのスタンダードキュヴェ。
爽やかな果実味と、
キレのある酸が特徴です。
ドクター・エルが、
餃子と一緒に少し陽気に飲むリースリングなら、
こちらは、
背筋を少し伸ばした感じ。
餃子側は、
特に酢胡椒がいい。
なぜ合う?
酢の酸。
胡椒のスパイス。
生姜。
ニラ。
そこへ、
辛口リースリングの酸。
醤油をたくさん使わないことで、
餃子そのものの豚肉と野菜の甘味も見えてきます。
おすすめの食べ方
酢+白胡椒。
かなりシンプル。
餃子の味が濃すぎなければ、
これがとても美味しい。
飲む温度
8〜10℃。
冷やしすぎず、
少し香りを出します。
④ 辣油たっぷりなら|フレシネ コルドン ロゼ
スペイン・ロゼスパークリング
「餃子にロゼ?」
と思いますよね。
かなり良いです。
フレシネ コルドン ロゼ。
ガルナッチャとトレパットを使ったロゼスパークリングで、ラズベリーやサクランボ、シナモンを思わせる香りを持つやや辛口タイプです。
なぜ餃子に合う?
白の泡だけでは少し負けそうな、
肉+辣油
に強い。
赤い果実の風味が豚肉に寄り、
泡が脂を流す。
そしてわずかな甘みが、
唐辛子の刺激を少し丸くしてくれます。
おすすめの食べ方
黒酢+辣油。
これはかなりおすすめ。
黒酢のコク。
唐辛子。
豚肉。
ロゼの赤い果実。
きれいにつながります。
白ワインと赤ワインの間で、
ロゼがちゃんと仕事をします。
ロゼというのは、
たまに「どっちつかず」と言われますが、
餃子に関しては、
両方分かる中間管理職。
非常に頼れます。
フレシネ コルドン ロゼを探す
⑤ 赤ワインなら|ルイ・ジャド ボージョレ・ヴィラージュ
フランス・ボージョレ/ガメイ
「いや、餃子でも赤ワインを飲みたい」
はい。
それなら、
重たいカベルネへ行く前に、
ガメイ。
具体的には、
ルイ・ジャド ボージョレ・ヴィラージュ。
ガメイ100%で、赤い果実を中心としたジューシーでフレッシュなスタイル。公式のボージョレ・ヴィラージュでは14〜16℃程度の提供温度も案内されています。
なぜ餃子に合う?
タンニンが強すぎず、
果実味がある。
酸もある。
つまり、
豚肉には寄り添うけれど、
餃子を押しつぶさない。
これが大事。
濃厚なフルボディ赤を合わせると、
餃子一個に対して、
ワインが、
「私の話も聞いてください!」
となりがちです。
ガメイなら、
もう少し空気が読めます。
おすすめの食べ方
黒酢+醤油少々。
または、
そのまま。
黒酢の熟成感と、
ガメイの赤い果実。
豚肉の旨味。
なかなかいい組み合わせです。
飲む温度
14℃前後。
少し冷やして。
夏場に常温の赤ワインを出すと、
日本の「常温」は、
フランス人が想像している常温よりかなり元気です。
冷蔵庫で20〜30分くらい冷やしてもいい。
タレ別|羽根つき餃子とワイン早見表
| 餃子の食べ方 | おすすめワイン | 具体的な銘柄 |
|---|
| 何もつけない | 辛口スパークリング | フレシネ コルドン ネグロ |
| 酢胡椒 | カヴァ/辛口リースリング | フレシネ コルドン ネグロ/トリンバック リースリング |
| 酢醤油 | 辛口リースリング | ドクター・エル リースリング・ドライ |
| 酢醤油+辣油 | リースリング | ドクター・エル リースリング・ドライ |
| 黒酢+辣油 | ロゼスパークリング | フレシネ コルドン ロゼ |
| 黒酢+醤油 | ガメイ | ルイ・ジャド ボージョレ・ヴィラージュ |
迷ったら、
まずフレシネ コルドン ネグロ。
赤ワインなら、
ガメイ。
辣油を効かせるなら、
リースリングかロゼ。
この3本柱で考えると、
かなり選びやすくなります。
逆に餃子に合わせにくいワインは?
もちろん、
絶対ダメではありません。
好きなワインを飲む。
これは大前提です。
ただ、
ペアリングとして難しくなりやすいものがあります。
タンニンの強いフルボディ赤
濃厚なカベルネ・ソーヴィニヨン。
若くて渋味の強い赤。
餃子自体は、
ステーキほど肉の塊ではありません。
皮。
野菜。
豚肉。
このバランスでできています。
そこへ強烈なタンニンを持ってくると、
ワインだけが少し大きすぎる。
しかも酢を使うと、
渋味が目立つこともあります。
樽の強い濃厚シャルドネ
餃子の香りの中心は、
ニラ。
生姜。
にんにく。
胡麻油。
ここへ、
バター。
バニラ。
強い樽香。
を持ってくると、
少し方向が違うことがあります。
合わせるなら、
もっとフレッシュで酸のある白を選びたい。
アルコールの高い赤+辣油
辣油たっぷりの餃子に、
アルコール14.5%前後の濃厚な赤。
これは刺激が強くなりやすい。
口の中に、
唐辛子。
アルコール。
にんにく。
胡椒。
全員集合。
宴会としては盛り上がっていますが、
ペアリングとしては少し騒がしい。
そんなときは、
リースリングやロゼへ逃がします。
ソムリエ的に一番面白いのは「同じ餃子でタレを変える」
今回、
ぜひ試してほしいのがこれ。
餃子を5種類作る必要はありません。
餃子は一種類。
小皿だけ、
5枚。
- 何もつけない
- 酢胡椒
- 酢醤油
- 黒酢
- 黒酢+辣油
これで食べ比べます。
すると、
「餃子には何のワインが合う?」
という質問が、
途中から、
「自分は餃子の何が好きなんだ?」
という質問に変わってきます。
肉汁が好き。
羽根が好き。
黒酢が好き。
辣油が好き。
人によって、
主役が違います。
ワインペアリングとは、
ワインを当てるクイズではありません。
自分が料理のどこを美味しいと思っているのかを、ワインで見つける遊び
でもあります。
ここが面白い。
市販の冷凍餃子でもワインは合わせられる?
もちろんです。
毎回25個包んでいたら、
餃子の記事を書く前に、
こちらが包まれます。
冷凍餃子の場合も基本は同じ。
ただし市販品は、
自家製より、
塩味。
にんにく。
調味料。
がしっかりしている商品もあります。
そんな場合は、
細かく考えすぎず、
辛口スパークリング
が一番安全。
フレシネ コルドン ネグロのようなカヴァなら、
焼き目も脂もまとめて受け止めてくれます。
ワインを買うなら「餃子専用」で考えなくていい
今回紹介したワインは、
餃子だけに使えるワインではありません。
例えば、
フレシネ コルドン ネグロ
天ぷら。
唐揚げ。
春巻き。
魚介。
リースリング
麻婆豆腐。
よだれ鶏。
豚しゃぶ。
スパイス料理。
ガメイ
焼き鳥。
豚肉。
鰻。
軽めの肉料理。
こうやって、
他の料理にも使えるワイン
を選ぶのが家庭では大事です。
「餃子専用ワイン」を買ったものの、
翌日から餃子を焼き続ける生活になる必要はありません。
「ソムリエが本気で答える、料理とワイン」シリーズ
今回の記事は、
「ソムリエが本気で答える、料理とワイン」シリーズ第2弾。
第1弾では、
麻婆豆腐に合うワイン
を、
花椒。
辣油。
豆豉。
辛味。
から考えました。
麻婆豆腐に合うワインは?現役ソムリエが花椒・辛さ別に本気で選ぶ

麻婆豆腐では、
リースリングがかなり活躍しました。
そして今回の餃子でも、
リースリングが再登場。
これは偶然ではありません。
中華料理は、
「肉だから赤」
ではなく、
香味野菜・油・辛味・発酵調味料
を見ると、
白ワインやロゼがかなり面白い。
今後も、
焼肉。
鰻。
天ぷら。
寿司。
サムギョプサル。
ステーキ。
と続けていきます。
まとめ|餃子には「泡」。でもタレを変えればワインも変わる
王道の羽根つき餃子に、
一本だけワインを選ぶなら、
ボクなら、
フレシネ コルドン ネグロ。
パリパリの羽根。
豚肉の脂。
胡麻油。
肉汁。
そこへ、
キリッとした酸と細かな泡。
まず間違いの少ない組み合わせです。
でも、
辣油を入れるなら、
ドクター・エル リースリング・ドライ。
酢胡椒なら、
トリンバック リースリング。
黒酢+辣油なら、
フレシネ コルドン ロゼ。
赤ワインなら、
ルイ・ジャド ボージョレ・ヴィラージュ。
餃子は同じ。
タレを変える。
ワインを変える。
これだけで、
いつもの餃子が、
ちょっとしたペアリングコースになります。
餃子とビールは、
もちろん最高です。
長年連れ添っていますから。
そこへ、
たまにはワイン。
隣の席に座らせてみてください。
最初は少し緊張しています。
でも、
羽根つき餃子を一個食べれば、
だいたい仲良くなります。
そして気づけば、
ビール。
ワイン。
餃子。
全員います。
結局、
テーブルが一番忙しくなりました。

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