牛ハツを、60℃で2時間。
しかも今回は、牛乳と一緒に低温調理しました。
牛ハツというと、焼肉屋さんでサッと焼いて食べるイメージが強いかもしれません。コリッとして、赤身のようで、でも少し鉄っぽい。あの独特の旨みが魅力です。
ただ、家で厚みのある牛ハツを焼こうとすると、意外と難しい。
中まで火を入れようとすると、外側が固くなる。
外側をちょうどよく焼こうとすると、中が不安になる。
肉の世界にも、なかなか厳しい人間関係があります。
そこで今回は、先に低温調理で中までしっとり火を入れてから、最後にマイヤーフライパンで表面だけを香ばしく焼きました。
仕上げは、牛ハツのタリアータ。
合わせるのは、春菊、マッシュルーム、白髪ねぎ、紫玉ねぎ。ドレッシングは、くんの白い醤油麹ドレッシングをベースに、上海老酒、マスターネ、バルサミコを合わせます。
イタリアンのタリアータに、シノワの熟成香を重ねた一皿。
これは、ただの牛ハツステーキではありません。
牛ハツが、少し背筋を伸ばしてレストランの前菜になった日です。
この料理でわかること
- 牛ハツを低温調理でしっとり仕上げる方法
- 牛乳を入れて低温調理する理由
- 60℃2時間で牛ハツがどう変わるか
- 焼きすぎず、表面だけ香ばしく仕上げるコツ
- 春菊と上海老酒を合わせるイタリアン・シノワの組み立て
牛ハツは低温調理に向いている?
牛ハツは、牛の心臓です。
筋肉質で、脂は少なめ。赤身に近い旨みがありながら、独特の弾力があります。
この弾力が、牛ハツの魅力です。
ただし、強火で焼きすぎると固くなりやすい。せっかくのハツが、急にゴム寄りの人生を歩み始めます。
そこで低温調理。
先に60℃で2時間、じっくり火を入れておくことで、中心までしっとり。最後に表面だけ焼けば、香ばしさとむっちり感を両立できます。
今回の仕上がりは、まさにその良さが出ました。
断面はきれいなロゼ色。食感はむっちり。ハツらしい鉄っぽい旨みは残しながら、焼きすぎたときの固さはありません。
なぜ牛乳を入れて低温調理するのか
今回は、牛ハツと一緒に牛乳を保存袋に入れて低温調理しました。
牛乳を使う理由は、ハツ特有の鉄っぽさや内臓香をやわらげるためです。
レバーほどクセが強いわけではありませんが、牛ハツにも内臓らしい香りがあります。そこに牛乳を少し入れると、味の角が丸くなり、仕上がりがやさしくなります。
低温調理後の袋の中には、牛乳と肉汁が混ざった液体が残ります。
この液体は、今回はソースには使いません。風味が濁りやすいので、潔く捨てます。
料理には、使う勇気と、使わない勇気があります。
今回使った主な道具
- 低温調理器
- 保存袋
- マイヤーフライパン
- よく切れる包丁
低温調理で中まで火を入れ、マイヤーフライパンで表面に焼き色をつけます。
今回のポイントは、フライパンで長く焼かないこと。
もう火は入っています。最後の焼きは、加熱というより、香ばしさを着せる作業です。
材料
牛ハツの低温調理
- 牛ハツ 適量
- 牛乳 牛ハツが軽く浸るくらい
- 塩 牛ハツの重量の0.8〜1%
- 黒胡椒 少々
- にんにく 少量 ※好みで
- オリーブオイル 少量
焼き上げ用
- オリーブオイル 適量
- 黒胡椒 適量
春菊サラダ
- 春菊 1束
- 白ねぎ 1/2本
- 紫玉ねぎ 少量
- パクチー 適量
- パルミジャーノ 適量
- 黒胡椒 適量
- 花椒、または山椒 ほんの少し
白い醤油麹と上海老酒のドレッシング

- くんの白い醤油麹ドレッシング 大さじ3
- 上海老酒 小さじ2
- バルサミコ酢 小さじ1
- レモン汁 小さじ1
- マスターネ 小さじ1〜1と1/2
- オリーブオイル 小さじ1
- 黒胡椒 少々
- 花椒、または山椒 ほんの少し
上海老酒の香りをしっかり出したい場合は、上海老酒とバルサミコ酢を小鍋で軽く煮詰め、冷ましてからドレッシングに合わせます。
作り方




1. 牛ハツを下処理する
牛ハツは、血合いや太い筋、余分な脂があれば取り除きます。
今回は厚みを残して、低温調理後にタリアータ(薄切り)として切る仕立てにしました。
塩、黒胡椒をして、保存袋に入れます。
そこに牛乳、好みでにんにく、オリーブオイルを加えます。
できるだけ空気を抜いて、低温調理の準備をします。
2. 60℃で2時間、低温調理する
低温調理器を60℃に設定します。
牛ハツを入れた保存袋を湯せんに沈め、2時間加熱します。
今回の設定は、60℃で2時間。
ハツのむっちりした食感を残しながら、中までじんわり火を入れます。
3. 低温調理後の牛ハツを取り出す
2時間たったら、牛ハツを袋から取り出します。
表面の水分をしっかり拭き取ります。
ここで水分が残っていると、フライパンで焼いたときに焼き色がつきにくくなります。
袋に残った牛乳と肉汁は、今回は使いません。
4. 春菊サラダを用意する
春菊は葉を中心に使います。太い茎は細く刻めば使えます。
白ねぎは白髪ねぎにし、水にさらして辛みを抜きます。
紫玉ねぎは薄くスライスします。
パクチーをざく切りにして全てを合わせる。
5. 白い醤油麹と上海老酒のドレッシングを作る
ボウルに、くんの白い醤油麹ドレッシング、上海老酒、バルサミコ酢、レモン汁、マスターネ、オリーブオイル、黒胡椒、花椒を入れて混ぜます。
マスターネは、粒マスタードよりも甘みと旨みがあり、ハツの鉄っぽさを丸く受け止めてくれます。
上海老酒は、熟成香と甘酸っぱい余韻を足す役。
白い醤油麹の旨み、上海老酒の香り、バルサミコの酸味、マスターネの甘酸っぱさ。
このドレッシングが、今回のイタリアン・シノワの中心です。
6. マイヤーフライパンで表面だけ焼く


フライパンをしっかり温め、オリーブオイルを少量入れます。
低温調理した牛ハツを入れ、表面だけを強火で焼きます。
ポイントは、焼きすぎないこと。
中まで火を入れ直す必要はありません。
低温調理で中はすでにしっとり火が入っています。ここでは、表面に香ばしさだけをつけます。
焼くというより、香ばしさを着せる。
牛ハツに、ちょっと良いジャケットを羽織らせる感じです。
7. 薄く切って盛りつける


焼き上がった牛ハツを、薄くスライスします。
皿の中央に春菊、白髪ねぎ、紫玉ねぎのサラダをふわっと盛ります。
そこにドレッシングを軽く絡めます。
牛ハツのタリアータを周りに並べ、パルミジャーノ、黒胡椒、花椒を散らします。
最後にオリーブオイルをひと回し。
味のポイント
この料理の主役は、もちろん牛ハツです。
でも、牛ハツだけで完結させないのが今回のポイント。
春菊の苦みが、ハツの鉄っぽい旨みを受け止めます。
白髪ねぎと紫玉ねぎが、香味とシャープさを足します。
そこに、白い醤油麹の旨み、上海老酒の熟成香、マスターネの甘酸っぱさ、バルサミコの酸味。
イタリアンのタリアータに、シノワの香りがそっと入ってくる。
これは、無理やり混ぜた料理ではありません。
ハツ、春菊、上海老酒、白い醤油麹。全員がそれぞれの役割を持って、皿の上でちゃんと働いています。
こういう職場なら、ボクも入社したい。
この料理はイタリアン・シノワなのか?

これは、かなりイタリアン・シノワです。
牛ハツをタリアータとして仕立てるところは、イタリアン。
オリーブオイル、パルミジャーノ、黒胡椒も、イタリアン側の要素です。
一方で、上海老酒、白い醤油麹、花椒、白髪ねぎの香味は、シノワの要素。
つまり、骨格はイタリアン。余韻はシノワ。
くんのごはん式に言えば、これはイタリアン・シノワの牛ハツタリアータです。
上海老酒と牛ハツの相性
今回合わせたのは、石庫門の上海老酒12年。
紹興酒のような熟成感がありながら、ハチミツ、クコ、干し梅を思わせる甘酸っぱい余韻があります。
牛ハツには、鉄っぽい旨みがあります。
この鉄っぽさに、熟成した紹興酒系のお酒はよく合います。
赤ワインを合わせるのももちろん良いのですが、今回はドレッシングにも上海老酒を使っているので、グラスの中の香りと皿の上の香りが自然につながります。
温度は、常温から軽く冷やすくらいがおすすめ。
熱燗にすると香りは立ちますが、今回のタリアータには少し重く感じるかもしれません。
軽く冷やして、熟成香をすっきり楽しむくらいがちょうどいいです。
ソムリエのひとこと
牛ハツのタリアータには、赤ワインだけでなく、熟成した紹興酒系のお酒もよく合います。
牛ハツには、赤身肉に近い旨みと、内臓らしい鉄っぽさがあります。
そこに上海老酒の熟成香、干し梅のような酸、ほのかな甘みが重なると、肉の余韻がきれいに伸びます。
ポイントは、料理側にも同じ香りを少し入れること。
今回は、白い醤油麹ドレッシングに上海老酒を加えました。
これによって、飲み物と料理が別々に存在するのではなく、皿とグラスが同じ方向を向きます。
春菊の苦み、パクチーの爽やかさ、パルミジャーノの旨み。
このあたりも、上海老酒の熟成感とよくつながります。
赤ワインなら、軽めのサンジョヴェーゼ、バルベーラ、ランブルスコの辛口も合います。
でも今回は、上海老酒。
ハツの前で、ワインが少し席を譲った日です。
よくある質問
牛ハツは低温調理した方がいいですか?
厚みのある牛ハツは、低温調理すると中までしっとり火を入れやすくなります。最後に表面だけ焼けば、むっちりした食感と香ばしさを両立できます。
牛ハツを牛乳に漬ける意味はありますか?
牛乳を使うと、ハツ特有の鉄っぽさや内臓香がやわらぎます。今回は保存袋に牛ハツと牛乳を入れ、60℃で2時間低温調理しました。
牛ハツの低温調理は何度がいいですか?
今回は60℃で2時間にしました。むっちりした食感を残しながら、中までしっとり火を入れる狙いです。
低温調理後の牛乳はソースに使えますか?
今回は使いません。牛乳と肉汁が混ざって風味が濁りやすいため、ソースにはせず捨てました。
牛ハツのタリアータには何を合わせると美味しいですか?
春菊、クレソン、ルッコラ、マッシュルームなど、苦みや香りのある野菜がよく合います。今回は春菊、白髪ねぎ、紫玉ねぎ、マッシュルームを合わせました。
牛ハツに上海老酒は合いますか?
合います。牛ハツの鉄っぽい旨みに、上海老酒の熟成香や干し梅のような甘酸っぱい余韻がよく合います。ドレッシングにも少し使うと、料理とお酒の香りがつながります。
まとめ
牛ハツは、焼くだけでも美味しい食材です。
でも、厚みのある牛ハツを家でおいしく仕上げるなら、低温調理はかなり頼れる方法です。
今回は、牛乳と一緒に60℃で2時間。
中までしっとり火を入れてから、マイヤーフライパンで表面だけ香ばしく焼きました。
薄く切れば、むっちりした牛ハツのタリアータ。
そこに春菊、パクチー、白い醤油麹、上海老酒、マスターネ。
イタリアンのタリアータに、シノワの香りを重ねた一皿になりました。
牛ハツは、ただのホルモンではありません。
ちゃんと火入れして、ちゃんと香りを合わせると、レストランのメインみたいになります。
心臓を食べる料理なのに、なぜかこちらの心が少し落ち着く。
料理というのは、不思議なものです。
🐾ぶーちゃんのひとこと
ハツって、心臓なんだって。
じゃあこれは、心をこめた料理だね。
……ちょっと上手いこと言った顔で、台所の下にいます。

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